中等教育における研究倫理:基礎編 p7

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(イ)研究の実施について
1)データの収集

rse01_10データの種類には、実験室で合成された化学物質の質量、野外観察で見つけた生物の数、顕微鏡の画像データ、風速や風向などの数値、アンケートの結果など様々なものがあります。

データを収集するときまでには、結論を導き出すために必要なデータの数について検討していることが重要です。少数のサンプル数では有意差(偶然や誤差で生じたのではなく、本質的に意味の有る差)が認められないことがあり、せっかく実験しても結論が出ないことがあります。特に生物学的実験では個体差が大きいため注意が必要です。また、データ収集のために適切な機器を選んでいるか、その使い方について習熟できているか、その機器で知りたい精度の値が正確に求まるかなどについても検討が必要です。データ数や収集方法が適切でないと、研究目的に対した答えが得られない、再現性を確認できないなどの問題点が生じてしまいます。

2)研究過程や結果を研究ノートや電子ファイルに正確に記録・保管する

研究の過程は「研究ノート(実験ノートまたはラボノートとも呼ぶ)」に記録します。研究ノートには実験方法、実験の結果などをその都度記録していきます。研究ノートは十分なサンプル数の実験が終わった後に研究成果をまとめるために用いることができます。また、ほかの人が同じ実験を行うために参照することもできます。研究ノートは実験がうまくいかなかったときや予想した結果が出なかったときにも得られた結果通りにそのまま正直に記録する必要があります。これは、あとから実験方法を改善するヒントとなったり、当初予想しなかった新たな発見を導いたりできる(セレンディピティという)からです。また、自分たちが誠実な研究を行ってきた証拠にもなります。

3)解析方法

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データを分析するうえでは「統計」という手法を理解したうえで進めましょう。例えば、Aという薬品を使ったグループと使わなかったグループで、結果に統計上有意差があるかどうかを比較・検討しましょう。せっかく苦労して行った実験でも、最後にデータ解析の問題点を理解していないと、研究の信憑性が問われることになることもあります。「研究の指導者」からアドバイスをもらいながら適切な解析を行いましょう。