ご挨拶

会長挨拶                      

 一般財団法人公正研究推進協会(APRIN:Association for the Promotion of Research Integrity )を設立の2016年4月から8年間、理事長を務めてまいりましたが、この度、理事長を退任、会長に就任することになりましたので挨拶申し上げます。

 APRINは文部科学省 大学間連携共同教育推進事業「研究者育成の為の行動規範教育の標準化と教育システムの全国展開」(2012年~2017年に採択;信州大学(代表校)他5大学)」の終了の一年前に設立し、この事業を引き継ぎ、新しく改組し発展する法人格を持った組織として作られました。

 設立の目的は、医生命科学系・理工学系・人文学・社会科学系などの広範な分野の日本の研究者、大学院生・学部生、研究支援を行う立場の方々への研究倫理・研究公正関係の教材(APRIN eラーニングプログラム)の作成や情報提供、講師の派遣、研究機関の規範作り支援などの活動を通じて科学や技術の発展に伴うグローバルな視点に基づく研究倫理を啓発し、研究機関、各種学術団体、企業などの研究活動を支援することにあります。その支援対象は大学等の高等教育研究機関の研究者・大学院生のみならず、中等教育の現場から企業等の実務者にまで拡大していきました。

 設立当初は論文捏造や改ざん、盗用(FFP)などの研究倫理教材を開発していましたが、その後は利益相反・研究インテグリティ・セキュリティーに対する教材開発など、その時代の社会情勢に合わせて教材開発や研究支援を進めてまいりました。この間、各種委員会・分科会を中心として、各分野の専門家からのご協力を得て、教材の作成・改訂を行い、作成した教材はeラーニングの形式で配信しています。

 また毎年行われる「全国公正研究推進会議」では、各学術、科学・技術分野に特徴的な行動規範について、国際的、先端的な視野を以て自由に研究が進められるようシンポジウムやセミナー等を開催しています。参加者は国内のみならず、欧米有識者の基調講演を実施するなどAPRINの事業内容は一層充実したものとなってきています。
 更に2023年の3月には第5回アジア太平洋研究公正ネットワークミーティング 2023(APRI2023 TOKYO)国際会議も主催し早稲田大学で開催しています。この国際会議でも取り上げられた生成AIや大きく変化する国際社会での研究倫理や研究公正の在り方も今後の課題になってきます。

 末筆になりますが、長い間、このように多くの方々のお力添え、ご協力があって一般財団法人公正研究推進協会(APRIN)の活動が大きく発展していますことに心より感謝申し上げます。今後ともAPRINへの益々のご支援とご協力をお願いします。 

  令和6年6月24日
一般財団法人公正研究推進協会 会長
浅島 誠

理事長挨拶

 一般財団法人公正研究推進協会(APRIN, Association for the promotion of research Integrity)は、研究倫理の啓発活動を目的として、2016年4月にわが国の医生命科学系、理工学系、人文学・社会科学系を代表する研究者らによって設立されました。本協会は、2012年に採択された文部科学省大学間連携共同教育推進事業「研究者育成の為の行動規範教育の標準化と教育システムの全国展開」(信州大学(代表校)、東京医科歯科大学、福島県立医科大学、北里大学、上智大学、沖縄科学技術大学院大学)を母体としております。この事業は、全国医学部長病院長会議、日本医学会、宇宙航空研究開発機構、全国遺伝子医療部門連絡会議、NPO法人日米医学教育コンソーシアムと連携して、2017年3月まで実施されました。終了時の事業評価は最高ランクのS評価であったと伺っております。この間に蓄積されたeラーニング教材を継承し、事業を発展させるために設立されたのがAPRINです。

 APRINはeラーニング教材を作成するだけでなく、研究倫理・研究公正関連教材の提供やセミナーの開催、講師の派遣、研究機関の規範作りなどを通じて、研究活動を支援して参りました。支援の対象は、研究機関だけでなく、学術団体や企業も含まれ、最近は中等教育の教員や生徒にも拡がっております。2024年3月時点でのeラーニングの利用機関は、会員数419機関、大学でみると国公立大学の6割、私立大学の3割に利用いただいております。また2018年3月には公正研究推進連絡会議を開催、翌年に全国公正研究推進会議と改称し、現在に至っています。2023年には第5回アジア太平洋研究公正ネットワークミーティング 2023(APRI2023 TOKYO)を主催するなど、国際的な取り組みにも力を入れています。

 eラーニング教材の作成はAPRINの最も重要な活動です。作成にあたっては公正を期すために、企画運営委員会と教育研究推進委員会において原案を作成し、各分科会で内容の検討、査読者の選定、草稿作成、さらに単元別査読会議で合意を得て承認されます。この間、外部評価委員会、利用者等からいただいた意見を反映するようにしております。

 研究公正を理解するのは容易ではありません。様々な法律や通知、ガイドラインがあり、全体を把握するのには時間がかかります。倫理委員会の考え方も機関毎に異なり、国際的にも海外でも国の文化や歴史によって違いがみられます。また研究にはリスクとベネフィットがあり、そのバランスは時代とともに変化します。最近は、経済安全保障を踏まえた研究公正も問われるようになりました。さらに生成AIの時代が到来したことにより、新たな問題が生まれています。これらについても国内での幅広い議論と国際的な連携・協議が必要と考えております。多くの問題を抱えながらではありますが、APRINはわが国の研究倫理と公正研究の向上に努め、科学技術領域を超えて、わが国の学術の発展に貢献する所存です。

 令和6年6月24日 
一般財団法人公正研究推進協会 理事長 
永井 良三